「眠活」のカギは覚醒力を抑えること
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ばくさん
え、“眠活”?
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あんちゃん
そう!最近は、“眠活”という言葉もあるらしいわよ
就活、婚活、腸活と世は“○活”ばやり。眠りに関しても「眠活」が登場し、「眠る力(睡眠力)」を取り戻す活動といった説明がされているようです。しかし、睡眠に悩みを抱えている人の場合、原因は睡眠力の低下ではないといったら意外でしょうか。働く世代で見られる不眠は睡眠力の低下ではなく、それを上回る「目覚め過ぎ」によるものであり、この現象は睡眠科学で「過覚醒」と呼ばれています1)。
過覚醒はなぜ起きるのでしょう? 私たちの体はストレスを感じると一過性に交感神経が緊張してストレスホルモンを分泌し、生体防御の体制を作ります。これによりストレスへの抵抗力を高めると同時に強力な覚醒作用を発揮し、注意力を高めて外界の変化に即座に対応できるようになります1)。例えば深夜でも地震警報が鳴れば眠気が吹き飛ぶ、あの状態が覚醒反応です。通常この反応はストレスから解放されればおさまるものですが、ときに覚醒度が高止まりしてしまう、それが過覚醒です。ストレスの強度が大きい、あるいは長期間続いた場合などには過覚醒が持続し、固定化してしまうことがあり、その場合不眠もまた頑固で治りにくくなってしまうのです1,2)。
流行りの「眠活」も、過覚醒に注意を向けることが大切です。過覚醒に陥らないようにストレスに早目に対処すること、それと同時に長引く不眠を放置しないことが重要です。眠れない体験を続けると不眠恐怖が生じて就寝前の緊張が高まり過覚醒を助長してしまいます。睡眠への対処はリラクセーション、運動、自分が信頼する快眠法など何でもよいですが、いろいろ試しても効果が出ないときは過覚醒がすでに形成された可能性があります。「不眠と日中の不調が3カ月間続いている」。これが慢性不眠症と診断する一つの目安(睡眠障害国際分類の診断基準)です2)。専門のドクターなどに相談するタイミングと考えてください。
まとめ
「眠活」に注目が集まるのは喜ばしいことですが、よい睡眠をとるには睡眠の妨げとなる睡眠習慣(刺激物やアルコールの摂取など)や睡眠環境(光や温度など)を改善すること。これが「眠活」の第一歩です。
眠れない、その悩みは一人で長くかかえずに、身近な専門家に相談しましょう。
- 1)厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-009.html (最終閲覧日:2024年11月13日) - 2)睡眠障害国際分離第3版, ライフサイエンス, P.3-15, 2018