仕事のプレッシャーから眠れない日々が続いた
睡眠の悩み体験談

大塚 裕美 さん

夜中に目が覚める「中途覚醒」が気になっていると話す大塚裕美さんに、エーザイ社員がインタビューしました。眠りについて悩むのは、実は今回が初めてではありません。10年ほど前、日常生活に大きな支障をきたすほどの睡眠障害を経験していました。

※この記事は個人の経験、体験を元に作成しております。

近影:大塚 裕美 さん

気づいたときには、寝られなくなっていた

どのような睡眠の悩みを抱えているのですか

2023年11月ごろから中途覚醒があります。

実は、私が睡眠に問題を抱えるのは、これが初めてのことではありません。10年ほど前にほとんど寝られない状態に陥ってしまったことがあります。最近になって夜中に何度も目が覚めるようになり、過去の経験からも、これは睡眠障害かもしれないと感じました。

まず過去の睡眠障害についてお聞きします。原因やきっかけはあったのでしょうか

仕事のプレッシャーです。とても忙しい職場でした。金融関係だったのですが、毎日勉強をしても追いつかないくらいのスピードで、システムや環境などが変わりました。手を抜けば翌日の仕事に影響するという危機感から、寝る間を惜しんで勉強をしていました。

それでも日中に眠くなることはなく、1日の睡眠時間が1、2時間という日もありました。そうした生活が続くうち、いつしかほとんど寝られなくなってしまったのです。

睡眠時間が短いことを問題と思わなかったのですか

思いませんでした。大学時代も予習復習に長時間を要し、課題もかなり多いうえ、家事もこなさなければならず、平日の睡眠時間は2、3時間でした。それでも、週末は寝ようと思えばぐっすり眠れましたし、マウンテンバイク通学で体力もついていましたから、睡眠時間が短くて不調を感じることはなかったです。

社会人になってからも同様だったのですが、20代後半あたりから徹夜をすると翌日に疲れが残るようになりました。ただ、当時はリーマンショックで、金融業界は揺れに揺れていました。仕事の過酷さは増すばかりで、疲れたなどと言っていられない状況でした。少し寝ておこうと布団に入っても、目が冴えて寝つけず、起きてパソコンを立ち上げてしまう。そんな毎日を送っていると、気づいたときにはほとんど寝られなくなっていたのです。

寝られなくなったことに恐怖感はありましたか

頭痛や肩こりなどの不調や倦怠感が続いていましたし、このままではまずいという思いはありました。ただ、たかが睡眠不足、時間がもったいないという意識が勝り、病院は行かずにいました。しかし次第に出社するのもつらくなり、遅刻が続く状況を見かねた上司から、産業医に相談するよう促されました。

産業医からは、「睡眠で悩んでいるのだったら精神科を受診してください」と言われました。まさか精神科を勧められるとは思っていなかったので、言われた直後は戸惑いました。ですが、先生が言うには、睡眠を専門領域とするのは精神科であり、それ以外の診療科では薬を処方するだけで終わってしまう可能性もあるとのことでした。頭痛や肩こり、倦怠感がひどく体が悲鳴を上げているような状況だったこともあり、それが少しでも良くなるのであれば、受診する価値はあるという考えに至りました。

シンプルな助言が、眠りを取り戻す支えに

医師に相談する前に、ご自身で睡眠の改善を目的に試されたことはありますか

半身浴やストレッチ、日中の運動、寝る前のホットミルクなど、書籍やインターネットで睡眠に良いと紹介されていることは、できる限り試しました。でも、何をしても効果がなく、完全にこじらせてしまったなと。医師への相談をためらっていられる状況ではありませんでした。

精神科受診後、どのような治療をされたのですか

「大丈夫。眠れないと言っていても、人間は眠くなったら寝ています」「気づいたときには寝ています」。寝られないと打ち明けた私に、精神科の先生はそんな言葉をかけてくれました。とにかくホッとしましたし、とても救われた心地がしたのを覚えています。

病院では睡眠薬を処方されました。薬を飲むことに抵抗感はありませんでした。睡眠不足について調べれば、体の不調や病気の原因になるという情報はいくらでも見つけることができましたし、寝られない状態が続けばそのリスクは高まる一方です。飲んで少しでも早く自力で寝られるようにしたい、という思いしかありませんでした。

治療開始からどのくらいの期間で睡眠障害は改善されたのですか

精神科を受診して半年ほどで、薬なしでも寝られるようになりました。

薬は、自分が必要としている間は欠かさず飲みますが、必要としなくなると飲み忘れが増えてきます。自分自身の経験から言うと、飲み忘れても眠れるなら、そのときが薬の止めどきなのだと感じます*)。先生に飲み忘れたことを伝えると、「回復している証拠だから、飲まないで寝られるなら問題ないですよ」と。次にいつ受診すればよいか尋ねると「また気になったら来てください」との返答でした。

先生が飲み忘れを咎めたり、受診を強いたりすることは一切ありませんでした。最後に受診したときも、「お守り代わりに1週間分、薬を出しておきます」と。結局その薬を使うことはありませんでした。

「やりたくなければやらなくていい。やりたくなれば勝手にやります」。先生は終始そんなスタンスでした。治療の考え方は医師によって違うと思いますので、一概に先生が正しいとは言えないのかもしれません。ただ、私にはとても合っていました。

  1. *)ご自身の判断で睡眠薬の量を減らしたり、やめたりしないでください。医師の指示通りに服用してください。

健康的な生活で、中途覚醒は減りつつある

今の睡眠時間を教えてください

夜中に目が覚めてしまうこともありますが、トータルすると約8時間です。睡眠不足を感じたり、日中に眠くなったりすることもありません。1、2時間しか眠れないことを経験しているだけに、中途覚醒はあっても寝られることに幸せを感じています。

最近中途覚醒が生じるまでは、しばらく睡眠で悩むことはなかったようですが、心掛けてきたことはありますか。

以前の睡眠障害を振り返ってみると、冷え性や完璧主義など、仕事以外にも寝られなくなる要因はありました。ということもあり、睡眠を取り戻してからは、健康全般に気遣った生活を心掛けています。半身浴はなんとなくではなく、温度や時間にこだわり、日々の運動やストレッチも続けています。きちんとしないと気になってしまう等の考え方の癖は認知行動療法を試したり、まぁいっかと割り切るようにしたり、ストレスを感じないように心がけています。

食事に関しても、薬膳アドバイザー®の資格を取得し、健康に良いとされる食べ物を効果的な食べ方で食べることを意識しています。また、食べ物の温度にも気を使っています。例えば私は麺類が好きなのですが、夏場でもそうめんはなるべく控え、お蕎麦も温かいものを必ず食べるようにしています。大好きなサラダも、胃腸が温まった昼食時に少し食べるだけ。野菜は、スープに入れるなど温野菜で摂ることが多いです。

中途覚醒が生じるきっかけは何だったのですか

一時的なストレスだと思います。私生活で少し気になることがあったのですが、起きている間に考えてしまうだけでなく、夢にも出てくるようになりました。夢の中でも考えてしまい、その途中で目が覚める。もう一度、寝るのですが、夢の続きを見たり、別の心配事が夢に出てきたりして、結局また目が覚めてしまうといった状況です。

今の時点では病院に行くほどではないと思っています。自分でできることをいろいろと試みていて、夜中に目が覚める回数は、当初よりも減ってきています。

どのようなことを実践されているのでしょうか。

心身両方の面で健康的な生活を維持することを心掛けています。食事は栄養バランスの良い献立で1日3食をきちんと、特に夕飯は早めに食べるようにしています。起床後はまずカーテンを開け、外に出て、朝日を浴びます。朝だけでなく日中も意識的に太陽の光を浴びるようにしています。運動は柴犬を飼っているので1日2時間、朝晩の散歩が日課となっています。犬に合わせて歩くので早足です。そして1時間ほど半身浴をしますが、その前後の時間に室内で軽くストレッチもします。1日を通して、できる限りストレスを感じないように穏やかな気持ちで過ごすようにしています。

最近は睡眠の悩みを持つ人が少なくありません。そうした方々に助言するとしたら、どんなことを伝えたいですか

私の経験から言えるのは、睡眠を疎かにすることによるダメージは、思いのほか大きいということです。自分自身ではどうにもできないほど睡眠の状態が悪化してしまうと、元の状態に戻すのに多くの時間を必要とします。

もしそうなってしまった場合、できることならば悪化する前に、専門の病院を受診するのが一番だと思います。抵抗があるのなら、会社の産業医、風邪などでかかりつけ医を受診した際に相談してみるのもよいでしょう。悶々と悩んでいても、よくならないばかりか、寝られない時間を増やしてしまうことになりかねません。行動をすることが大切だと思います。

2024年2月エーザイ本社