1 理想の睡眠時間
日本の成人2万8000人を対象に行われた横断研究によると、睡眠時間について「6時間以上8時間未満」と回答した人が約6割を占めました1)。したがって約7時間が標準的な睡眠時間といえますが、理想の睡眠時間となると少し違ってきます。必要とされる睡眠時間は年齢によって変わりますし、季節などによっても増減します2,3)。
1つの目安として、日中の仕事や活動に支障をきたすような眠気がなければ、睡眠時間は足りていると判断できるでしょう4)。
2 睡眠時間と年齢の関係
健康な人の睡眠時間に関する複数の研究を解析した結果によると、年齢ごとの夜間の睡眠時間は、25歳が7時間であるのに対し、45歳は6.5時間、65歳は6時間と20年ごとに30分ずつ短くなります(海外データ)。高齢になるほど、身体が休んでいる状態のレム睡眠と深い睡眠の徐波睡眠が減ります2)。また、寝床で過ごす時間が長くなりがちで、夜中に目が覚める回数や時間が増える傾向があります。
若い頃と比べて睡眠時間が減ったと感じたとしても、極端な減少でなく、日中の眠気もなければ不安を感じる必要はありません。ただし、寝床にいる時間が長くなっていると、眠りが浅くなるなど睡眠の質に影響を及ぼすことがあるため、現在の睡眠時間に合わせて寝床に入る時間を見直すとよいかもしれません。
3 睡眠調整のメカニズム
睡眠は、睡眠欲求と覚醒系シグナルのバランスにより保たれており、19-22時の時間帯は最も覚醒水準が高く、寝付きづらい時間帯(入眠禁止ゾーン)です5)。良質な睡眠のためには、この時間に寝床に入るのは避けたいところです。
4 短時間睡眠と長時間睡眠
世の中には体質的に極端に睡眠時間が少ない人と多い人とがいます。前者を短時間睡眠者(ショートスリーパー)、後者を長時間睡眠者(ロングスリーパー)と呼びます。それぞれの1日の睡眠時間はショートスリーパーが5時間未満、ロングスリーパーが10時間以上とされています。両者に共通するのは、睡眠時間が短い、長いこと以外に健康上の問題がないという点です6)。
5 自分に合った睡眠時間を見つけよう
日中に眠くなることがなく、健やかに毎日を送れているようであれば、あなたの睡眠時間に問題はありません。起きた後も疲れが残っていたり、頭が重かったり、日中に強い眠気をもよおす場合は、睡眠が足りていない可能性があります。いつもより少し長めに寝てみたり、医師に相談するなどして、自分に合った睡眠時間を見つけましょう。
- 1)Kaneita Y, et al.: J Epidemiol. 2005 Jan; 15(1): 1-8
- 2)Ohayon M, et al.: SLEEP. 2004; 27(7): 1255-1273
- 3)Volkov J, et al.: ScientificWorldJournal. 2007 Jun; 7: 880-887
- 4)厚生労働省:健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf(最終閲覧日:2022年8月2日) - 5)三島和夫 編集:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン. じほう. P.8, 2014
- 6)米国睡眠医学会(編), 日本睡眠学会診断分類委員会(訳): 睡眠障害国際分類第2版, 医学書院, 2010