睡眠障害の原因

睡眠障害の原因にはさまざまなものがあります。
「眠れない」といった症状は同じでも、何が原因かによって解決策は一つではありません。
生活習慣を見直すことで症状が改善する場合もありますし、背景に隠れている病気の治療が必要な場合もあります。
睡眠障害の解決に向けた第一歩は、自分の症状とその原因を正しく知ること。
眠りに関する不安があれば、不眠症の自己チェックをする、医療機関に相談するといったことが大切です。

1 睡眠障害とは

睡眠に何らかの問題がある状態をまとめて「睡眠障害」と呼びます。睡眠が損なわれると日中の活動に支障をきたしますが、影響はそれにとどまりません。睡眠障害が糖尿病や高血圧などの生活習慣病や、うつ病などのリスクを高めることも明らかになりつつあります1)

2 睡眠障害の有病率

平成30年に厚生労働省が行った調査では、「睡眠で十分に休養が取れていない」と回答した割合は21.7%であり、平成21年からの推移で見ると有意に増加していました2)。睡眠障害はだれがなっても不思議ではない、とても身近な病気なのです。

3 睡眠障害の原因

睡眠障害はさまざまな原因によって起こりますが、主には大きく5つに分けられます3)

3-1 身体的原因

外傷や関節リウマチに伴う「痛み」、アレルギー疾患による「かゆみ」、呼吸器疾患による「咳」、高血圧や心臓病による「胸苦しさ」、腎臓病や前立腺肥大症による「頻尿」など、身体の病気、症状が睡眠を妨げている場合がしばしばあります。

3-2 薬理学的原因

治療のために服用している薬が睡眠障害の原因となっている場合もあります。睡眠を妨げる薬としては、降圧剤、抗パーキンソン病薬、ステロイド製剤、気管支拡張薬などが知られています。アレルギー性鼻炎に効果的な抗ヒスタミン薬には、日中の眠気を伴うものもあります。

カフェインやニコチンには覚醒作用があるため安眠を妨げます。コーヒー・紅茶・お茶をよく飲む人、喫煙や寝酒の習慣がある人は注意しましょう。また、早く寝つくためにお酒を飲む人もいますが、アルコールは眠りを浅くするので逆効果です4)

3-3 精神医学的原因

心の病気、精神疾患の多くは基本的な症状として睡眠障害を伴うことがあります。なかなか寝つけなかったり、眠っても夜中や早朝に目覚めてしまったりする原因が、うつ病であることも少なくありません。

不安の強い人が一度不眠を経験すると、睡眠に対するこだわりが強くなりすぎて、いっそう眠れなくなるという悪循環に陥りやすくなります。

パニック障害では、約3割の人が夜間にパニック発作を経験するため、「また発作が起こるのではないか」という不安から眠れなくなりがちです。

心の不調に思い当たる人は、早めに専門医に相談しましょう。

3-4 心理学的原因

家庭や職場におけるストレス、失職、深刻な病気、家族や親しい人の死といった人生における重大な変化・出来事などもやすらかな眠りを妨げます。

3-5 生理学的原因

海外への出張や旅行による時差ボケ、交替制勤務による昼夜の逆転、不規則な生活のために一定しない睡眠時間帯、短期の入院による生活サイクルの変化などにより、睡眠・覚醒のリズムが乱れることも睡眠障害の原因となることがあります。

4 睡眠障害の社会的影響

睡眠障害があると本人がつらいのはもちろんですが、社会的な損失も大きいことが明らかにされています。睡眠障害は日中の身体的あるいは精神的不調をもたらし、職場での生産性を低下させます5)

眠気と交通事故は関係があり、米国の交通事故全体の7.0%および致死的交通事故の16.5%が居眠り運転によるもので、職業運転手の事故の13%が眠気によるものだと報告されています6)

米国では、睡眠障害にかかわる費用は年間約10兆円と推計されています7)。また日本でも、睡眠障害による経済的損失は年間約3兆4700億円という試算があります8)

5 まとめ

睡眠障害は眠りの妨げ以外にも、生活習慣病などのリスクにもなります1)。早めに原因をつきとめ、対処することがとても大事になってきます。

  1. 1)厚生労働省e-ヘルスネット
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html(最終閲覧日:2022年8月1日)
  2. 2)厚生労働省 平成30年 国民健康・栄養調査
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08789.html(最終閲覧日:2022年12月2日)
  3. 3)菱川泰夫 他 編著:不眠症と睡眠障害, 診療新社, p.109-123,1999
  4. 4)厚生労働省ホームページ 健康づくりのための睡眠指針2014
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf(最終閲覧日:2022年9月8日)
  5. 5)大川匡子ら:日本臨床66(2): 63-72, 2008
  6. 6)Sparrow AR, et al. Accident Analysis and Prevention. 2019;126:146-159.
  7. 7)National Commission on Sleep Disorders Research. Wake Up America: A National Sleep Alert. 1993
  8. 8)武村真治ら:Geriatric Medicine 45(6): 679-85, 2007