レム睡眠とノンレム睡眠について

寝ている間は脳も身体もずっと休んでいると思われがちですが、
実はそうではありません。睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠という2つの睡眠状態が交互に訪れていて、
起きているときほどではないにせよ脳が活動している時間帯もあります。
この2つの睡眠のサイクルを知ると、夜中に起きてしまったり、朝になると自然と目が覚める理由がよくわかります。

1 レム睡眠とは

レム(REM)睡眠は、まぶたの内側で眼球がきょろきょろ動く急速眼球運動(Rapid Eye Movement:REM)と筋肉の活動低下を特徴とする睡眠状態です。筋肉の緊張がゆるんでいる一方で脳は活発に活動していて、脳波は起きているときに近い状態にあります1)

2 ノンレム睡眠とは

ノンレム(non-REM)睡眠は、レム睡眠とは異なる睡眠状態ということで、このように呼ばれています。レム睡眠でみられるような眼球運動はほとんどありません。眠りの深さによって3つの段階に分けられ、最も深い段階3は徐波睡眠とも呼ばれます1)

3 睡眠のサイクル

夜間の睡眠では、通常ノンレム睡眠から始まり、90~120分でレム睡眠に切り替わる周期が繰り返されます。健康な成人の場合、入眠後の早い段階で最も深い段階3の睡眠(徐波睡眠)に到達すると考えられています。その後は2つの睡眠状態が交互にあらわれますが、朝方に近づくにつれ、レム睡眠や浅い睡眠の割合が多くなってきます。レム睡眠は脳が働いた状態で、血圧や脈拍の変動もあることから、覚醒への準備状態ともいわれています2)。朝になると自然と目が覚めるのはこのためです。
また、人は高齢になるほど、深い睡眠である徐波睡眠が減少します(海外データ)3)。高齢者に中途覚醒や早朝覚醒が多くみられるのは、こうした睡眠の質の変化も関係しています1,2)

厚生労働省 e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html)を参考に作図(最終閲覧日:2022年11月1日)

4 レム睡眠・ノンレム睡眠の役割

全身の筋肉の緊張が緩んでいる状態であることから、レム睡眠は「体を休める睡眠」ともいわれます。脳は活発に働いていて、日中に得た情報、記憶などの整理が行われているとされています。

夢を見るのは多くはレム睡眠のときです。夢は、脳の記憶からランダムに呼び出された情報が瞬間的に合成、映像化されたものと考えられています。レム睡眠中は情報を読み出す機能は働いていますが、何かを記憶する機能は低下しているため、起きたとき夢の内容はあいまいにしか覚えていません。

一方のノンレム睡眠は、脳や交感神経、身体も休息している状態です。「脳が休んでいる睡眠」ともいわれます。

「寝る子は育つ」ということわざがありますが、睡眠中に分泌が増える代表的なホルモンの1つが成長ホルモンです。入眠後、最初の深いノンレム睡眠のときに大量に分泌されます。成長ホルモンは成長の促進だけでなく、身体の疲労回復などにも重要な役割をはたすと考えられています4)

5 レム睡眠・ノンレム睡眠を活かす最適な睡眠時間

睡眠中のレム睡眠とノンレム睡眠により、私たちの脳と体はリフレッシュされています。ノンレム睡眠とレム睡眠からなる90~120分のサイクルを4、5回繰り返すことのできる6時間~8時間というのが、最適な睡眠時間の1つの目安となるかもしれません2)

  1. 1)古池保雄 監修:基礎からの睡眠医学, 名古屋大学出版会, p.30-31, 2010
  2. 2)厚生労働省 e-ヘルスネット
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html (最終閲覧日:2022年11月1日)
  3. 3)Ohayon M, et al.: SLEEP. 2004; 27(7): 1255-1273
  4. 4)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.18-23, 2019