セロトニンの働き

睡眠・覚醒をはじめ、生活のリズムに深く関係するセロトニンについて紹介します。

更新日:2023/7/24

記事監修

滋賀医科大学医学部 / 精神医学講座 / 特任教授

角谷 寛 先生

1 セロトニンとは

脳内の神経伝達物質のひとつで、他の神経伝達物質であるドパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)などの情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になり、不安やうつ・パニック症(パニック障害)などの精神症状を引き起こすといわれています1)

2 セロトニンと睡眠の関係

以前はセロトニンに睡眠を促進させる作用があると考えられていましたが、セロトニンの放出が覚醒中に睡眠中よりも高いこともあり、今ではセロトニンが睡眠を促進するという考え方は否定されています2)
セロトニンが不足すると抑うつ状態や不安障害になりやすく、これらは不眠や過眠などの睡眠の問題の原因となりますので、セロトニン不足はこれらの精神的問題を介して睡眠にも影響する可能性があります。

3 セロトニンとメラトニン

トリプトファンという必須アミノ酸からセロトニンが作られ、さらに、セロトニンからメラトニンが作られます。メラトニンは脳内では睡眠覚醒のリズムを調整し、眠気をもたらすホルモンです。メラトニンの濃度には昼に低く夜に高いという日内リズムがありますが、夜に明るい光を浴びると濃度が上がらなくなります。この日内リズムの形成や光による影響は、セロトニンからの合成が調節されることによるものです3)
セロトニンやメラトニンの材料となるトリプトファンは、からだの中でつくることのできない必須アミノ酸ですので、たんぱく質として食事で摂る必要があります。
トリプトファンを含む主な食材には、ニシンやカツオなどの魚介類、卵、大豆などの豆類、牛乳などの乳製品などがあります4)
適度な量のトリプトファンを摂取するようにしましょう。

  1. 1)西大輔. e-ヘルスネット(厚生労働省)
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html(最終閲覧日:2023年5月30日)
  2. 2)西野精治、小野太輔. 睡眠学第2版(日本睡眠学会 編) P.74-83. 2020.
  3. 3)三島和夫. 睡眠学第2版 (日本睡眠学会 編) P.52-56. 2020.
  4. 4)文部科学省. 食品成分データベース.
    https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html (最終閲覧日:2023年5月30日)