朝型勤務・夜型勤務、どちらが正解?
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ばくさん
朝はぎりぎりまで寝ていたいなぁ
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あんちゃん
あら、私は朝の時間が好きよ。いろいろと朝の方が捗るのよね。
「早起きは三文の徳」と、昔から早寝早起きは健康の源とされてきましたが、この考え方に科学の眼から異を唱える動きがあります。近年、米国小児科学会が提案したのは、若者の睡眠時間を確保するために学校の始業時間をもっと遅くすべきというもの。later school timeと呼ぶこの施策が世界中で試みられた結果、抑うつや不安、ストレス症状が軽減され、授業中の居眠りが減り、成績が向上する等々の成果が報告されました1)。朝寝坊が功を奏するとは驚きですが、若者は体内時計が一生の間で最も夜型に傾くという生理的特徴があり、眠気の出る時刻も後ろにずれるため、夜更かしになりやすい。そこで起床時刻を遅くできるよう、学校の始業を遅くしたところ、睡眠不足による悪影響が改善されたのです。
では、働く世代ではどうでしょう。最近、残業時間の削減や仕事効率アップを狙って、始業時間を早める「朝型勤務」が話題です。もともと早起きの習慣がある人には、早い時間に仕事をテキパキこなし、退社後の時間を有効に使える朝型勤務は理想的な働き方かもしれません。しかし、誰もがそれに当てはまるわけではありません。人にはそれぞれクロノタイプ(朝型夜型指向性)があり、異なる体内時計を持っているため、夜型の人に朝型勤務を強要すれば問題が生じます2)。睡眠リズムを朝型に前倒しするのは体内時計のメカニズムから見てハードルが高く、結果、睡眠不足をさらに悪化させかねません。特に体質的に夜型傾向が強い人では、適応しきれずに、心身の不調を招く恐れがあり、不眠や生活習慣病など持病のある人はさらに健康管理が難しくなるでしょう。
つまるところ、望ましい働き方は体質の違いが大きく左右するもの。朝型、夜型と一律に決めるのは無理があるようです。世は多様性の時代、仕事のパフォーマンスを最適化する勤務時間にも多様性が求められています。
- 1)Adolescent Sleep Working Group, Pediatrics, 2014 Sep; 134(3), 642-9
- 2)Facer-Childs ER, et al. Sports Med Open. 2018 Oct 24; 4(1), 47
1)、2)は海外データです。