認知症と睡眠障害、その深い関係とは?
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かいばあちゃん
最近、眠りが浅い気がするのよ...
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あんちゃん
日中に軽いウォーキングから始めてみたら?
年齢とともに眠りが浅くなり、トイレの回数も増えて何度も起きてしまう。そんな加齢変化が一般の高齢者よりも強くあらわれるのが認知症の場合です1)。重度の不眠や強い眠気、時には昼夜逆転など不規則な睡眠パターンに陥ってしまうこともあり、それらを引き起こすいくつかの要因が挙げられます1,2)。
まず第1に「目覚める力が低下する」こと。覚醒状態を維持する神経細胞がダメージを受けて、しっかり目覚めているようでも簡単に意識障害(もうろう状態)に陥ってしまうのです。
第2は「眠る力が弱まる」こと。眠る力は日中の運動量や精神活動に影響されますが、認知症では運動量も社会活動も乏しくなるなどにより、睡眠の持続力が低下してしまいます。
3つ目は「体内時計が壊れる」こと。特にアルツハイマー病では発症のごく早期から睡眠覚醒リズムが乱れてしまいます。これらにより睡眠障害が重症化すると考えられますが、一方で睡眠障害が認知症のリスクを高めることも明らかになってきました3)。
アルツハイマー病ではアミロイドβというタンパク質が脳内で過剰に蓄積することが病因と考えられています3)。この物質は健康な人の髄液中にも存在し、普通はごく短時間で分解されます。アミロイドβの濃度は昼間に高く夜間に低いというリズムがありますが、睡眠障害はこのリズムを崩し、アミロイドβの蓄積を促し、アルツハイマー病の発症に関与しているという説もあります4)。また、徹夜(断眠)させるとアミロイドβ濃度が上昇するというデータ5)もあり、メリハリのある睡眠リズムや質の良い睡眠を保つことがアミロイドβの蓄積を抑える観点からも良さそうです。
このように認知症と睡眠の間には互いに影響し合う密接な関係があり、睡眠リズムの乱れや不眠、睡眠不足などの睡眠障害は、認知症リスクを高める生活習慣の一つとして見過ごせないといえるでしょう。
加齢とともに増える睡眠の悩み。生活を見直しても不調があるようでしたら、医療機関に相談してみましょう。
- 1)三島 和夫 編. 睡眠薬の適正使用ガイドライン, じほう, P.84-87, 2014
- 2)三島 和夫. 老年精神医学雑誌, 34(5), 487-493, 2023
- 3)日本睡眠教育機構 監修. 睡眠検定ハンドブック, 全日本病院出版会, P.369-370
- 4)Shokri-Kojori E, et al. PNAS. 2018 Apr 24; 115(17), 4483-4484
- 5)Ooms S, et al. JAMA Neurol. 2014; 70, 1544-1551
4)、5)は海外データです。