処方された睡眠薬は正しく使おう

医療機関で使われる睡眠薬はいくつか種類があります。
それぞれ違った特徴を持ち、作用時間の長さや副作用の種類・発現頻度は薬剤によって異なります1)
薬物治療の際は、決して自己判断で薬を変更したり、量を変更したりせず、
医師と相談しながら自分の症状に合った睡眠薬を用いるなど、治療決定していくことが大切です。

1 睡眠薬の処方について

不眠症をはじめとする睡眠障害は、睡眠衛生指導にもとづいた生活習慣や睡眠環境の見直しだけでは症状が改善しないことも少なくありません。このような場合、医療機関を受診していれば、睡眠薬を処方されることになります。処方された薬は、医師の指示を守って正しく服用しましょう。

2 他人に処方された睡眠薬は受け取らない

睡眠薬は種類が豊富です。当然ながら自分に合う薬と合わない薬があり、後者を使うと不眠症の症状が改善しないばかりか、かえって悪化してしまうこともあります。したがって他人が処方された睡眠薬は決して服用してはいけません。他人に睡眠薬を譲ったり、譲り受けたりすることは行わないようにしましょう。

3 病院で処方される睡眠薬と市販薬2)

睡眠薬はドラッグストアなどで販売されているものもあります。病院で処方される医療用医薬品と市販薬(一般用医薬品)は何が違うのでしょうか。
1つは有効成分です。医師の指導のもとで使われる医療用医薬品のほうが、有効成分の種類や含有量が多くなっています。市販薬(一般用医薬品)の睡眠薬としてよく使われるのは抗ヒスタミン剤で、一時的な不眠症状の緩和を目的としています。一方、医療用睡眠薬は抗ヒスタミン剤とは異なる成分の薬剤で、短期の不眠だけでなく慢性的な不眠症状に対して処方されます。医師は患者さんの症状や合併する疾患、薬の作用機序や作用時間、効果の強さなどを考慮のうえで、その方に適した睡眠薬を選択しています。

4 睡眠薬の種類

医療機関で主に使われている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬の3種類です。不眠症に対する効果は薬剤間で大きな差はありませんが、副作用の種類や発現頻度は異なります。

5 睡眠薬ごとの特徴

5-1 ベンゾジアゼピン系受容体作動薬

睡眠系(GABA)に働き、脳の活動を全般的に抑え、睡眠系優位の状態を作ります。

5-2 オレキシン受容体拮抗薬

覚醒を維持・安定化させる(起きている状態を保たせる)脳内物質・オレキシンの作用を抑え、脳を覚醒状態から睡眠状態に移行させることで、眠気をもたらすと考えられています。

5-3 メラトニン受容体作動薬

体内時計を調節するホルモンであるメラトニンの受容体に作用し、概日リズムを前進ないし後退させると考えられています。主に睡眠のリズムが乱れている場合に使われます。

6 医師の指導のもとで適切に使用

睡眠薬の治療に対して、不安を感じる方もいるかもしれません。
大切なのは医師と相談しながら治療すること。自己判断で薬を変えたり、量を増やしたり止めたりせず医師の指示する用法や用量を守っていれば、適切に治療を行えます。その結果、不眠の症状や日中の不調などが改善すれば、最終的に薬のない生活を送ることが可能な場合もあります。

  1. 1) 内山 真:睡眠障害の対応と治療ガイドライン第 3 版, じほう, p.104-125, 2019
  2. 2) 製薬協ホームページ
    https://www.jpma.or.jp/about_medicine/guide/med_qa/q15.html (最終閲覧日:2023年2月15日)