睡眠薬による持ち越し作用とは?
翌日も続く眠気や倦怠感の対処法を解説!

睡眠薬を服用することで、持ち越し作用として多いのは眠気です。
翌日も眠気が残って、仕事や用事に遅刻しないか心配に思う方も少なくないはず。
持ち越し作用が生じやすい場合や、眠気への対処法を理解した上で、服用するようにしましょう。

更新日:2023/7/24

記事監修

大阪回生病院 副院長

谷口 充孝 先生

1 眠気以外にもある持ち越し作用

持ち越し作用として多いのは眠気ですが、それ以外にも頭痛や頭重感、倦怠感、ふらつきなどの症状としてみられたり、認知や行動での障害を生じることもあります。持ち越し作用は眠気だけでなく、身体のだるさやぼんやりとした感覚として認識されることもあります。

2 持ち越し作用が生じやすい場合は?

持ち越し作用は、①くすりの効果のなくなる時間、②くすりの量、③くすりのタイプ(作用する受容体)によって異なります。

① くすりの効果のなくなる時間

くすりの効果のなくなる時間の目安となるのが半減期です。半減期は通常最も高い血中のくすりの濃度が半分になるまでの時間を言います。半減期の長い睡眠薬では起床時にもくすりの濃度が高いので、それだけ持ち越し作用による眠気などがみられやすくなります。

高齢になるとくすりによって異なりますが、半減期が延長しやすく持ち越し作用が増えます。また、半減期には個人差もあり、少し専門的になりますが、代謝された薬剤にも催眠作用がみられる場合もあります。くすりの情報に記載されている半減期はあくまで目安としてください。

② くすりの量

くすりの量が増えると、それだけ起床時の持ち越し作用が生じやすくなります。高齢になるとくすりの半減期が延長するだけでなく、同じ服用量でもくすりの濃度が高くなりやすく、それだけ持ち越し作用が生じやすくなります。また、複数の睡眠薬や抗不安薬などを併用すると、夜間の催眠作用は強くなりますが、それだけ持ち越し作用をおこしやすくなります。

③ くすりのタイプ(作用する受容体)

睡眠薬は、そのメカニズムから、①GABA受容体に作用する薬剤(ベンゾジアゼピン系薬剤、非ベンゾジアゼピン系薬剤)、②メラトニン受容体に作用する薬剤(メラトニン受容体作動薬)、③オレキシン受容体に作用する薬剤(オレキシン受容体拮抗薬)に分かれますが、GABA受容体に作用する薬剤の中には、持ち越し作用による眠気だけでなく、記銘力の障害など認知障害がみられる場合もあります2)

消失半減期を考慮した薬物選択(イメージ図)

三島和夫 編集:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.64, 2014 を元に大阪回生病院 副院長 谷口充孝 先生作図1)

3 翌日の眠気への対処法

睡眠薬を初めて服用される方では、翌日も眠気が残って、仕事や用事に遅刻しないか気にされ、心配に思う場合があります。朝に多少眠気が残っても、目覚まし時計に気がつかないことはまずみられませんが、もし、心配であれば、主治医と相談し睡眠薬の服用開始は休日の前日などにされると良いでしょう。

眠気など持ち越し作用がみられた場合には、まず主治医にご相談ください。もし、くすりの量が減らせるのであれば、量を減らすのが良いでしょう。また、半減期の短いくすりや、別のタイプ(受容体)のくすりに変更することもあります。

  1. 1)三島和夫 編集:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.64, 2014
  2. 2)三島和夫 編集:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.145-147, 2014