睡眠薬を長く飲み続けると効かなくなる?
耐性や対処法について

耐性とは、薬物を長期に続けて摂取すると身体に抵抗ができてしまい、
薬剤の効果が減弱することを言います1)
睡眠薬の中には、長期に連用すると次第に効果が減弱し耐性が生じる場合があります2)
耐性を考え睡眠薬を漫然と服用しないことは必要ですが、
最近ではこうした耐性の生じにくいと考えられている睡眠薬も登場しています。
長期使用の可能性がある場合には、なるべくこうした睡眠薬を選んだ方が良いでしょう。

更新日:2023/9/1

記事監修

大阪回生病院 副院長

谷口 充孝 先生

1 睡眠薬における耐性

耐性と睡眠薬の増量

谷口充孝監修 徳島裕子編集:
患者さんの疑問に答える Q&A 不眠症と睡眠薬 p.28-30を元に大阪回生病院 副院長 谷口充孝先生作成

最近はほとんど使用されることはない古い薬剤ですが、バルビツール系睡眠薬では早くから耐性が生じやすく、代わって1960年代から登場し現在もよく使われているベンゾジアゼピン系睡眠薬でも長期の連用により耐性が生じることが分かってきました2)。一方、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動性薬剤、オレキシン受容体拮抗薬では、長期使用でも耐性の生じる恐れがあまりないと考えられています。気をつけて欲しいのは、耐性が生じた場合、もとの効果を得るために安易に睡眠薬を増やすことです。耐性が生じた薬剤を増やしても、また耐性が生じ徐々に用量が増えてしまう悪循環になってしまう危険性があります2)

2 耐性への対処法を知っておきましょう

睡眠薬の耐性に対してどのように対処すれば良いでしょうか?いくつかのポイントがあります。

1つ目はなるべく睡眠薬を長期に連用しないことです。
慢性不眠症の場合の治療で、まず優先されるのは不眠の原因となっている生活習慣や考え方を見直すことです(認知行動療法)。こうした非薬物療法は時間がかかりますが、効果も持続します。睡眠薬の休薬を見据えて、こうした非薬物療法にもぜひ取り組んでください。

2つ目は長期服用の可能性がある場合には耐性の生じにくいと考えられている睡眠薬を服用することです。
従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも、最近登場した睡眠薬では耐性が生じにくいと考えられているものがあります。

3つ目は、耐性が生じたと考えられる場合には患者さんの自己判断で睡眠薬を増やすなど調整せず、必ず医師に相談することです。
安易に増量することは依存や様々な副作用が問題になります。ただし、不眠症が改善していないのに睡眠薬を休薬されると、直ぐに不眠が再燃することもあるので、たとえ耐性が生じた可能性があっても、過剰に心配して慌てないようにしてください。

  1. 1)e-ヘルスネット 耐性 厚生労働省
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-041.html (最終閲覧日:2023年7月28日)
  2. 2)三島和夫 編集:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.41, P.142-145, 2014
  3. 3)谷口充孝監修 徳島裕子編集 : 患者さんの疑問に答える Q&A 不眠症と睡眠薬 p.28-30