睡眠薬を
やめるタイミングはいつ?
減薬・休薬までの
流れを解説

睡眠薬は、基本的に無期限に長く使う薬ではありません。
不眠症が改善すれば、多くの場合、減薬や休薬を試みることになります。
不眠症の薬物治療は、やがて到達することになる減薬・休薬という出口について、
医師と本人が共通認識を持ちながら進めていくことが大切です。

1 睡眠薬の減薬・休薬までの流れとタイミング

不眠症の治療における減薬・休薬までの流れ、タイミング、注意点について説明します。

① 治療のゴールを検討

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインでは、症状把握から睡眠衛生指導、薬物療法、維持療法、休薬トライアルを経て、治療終了に至る不眠症の治療アルゴリズムが示されています1)。このアルゴリズムに従うと、不眠症の改善が認められた段階で、現在行っている薬物治療(維持療法)をどのくらいの期間続けるか、すなわち治療のゴールを検討することになります。

改善したからといってただちに減薬や休薬を試みることはありません。現在の治療を一定期間続けることで、再発のリスクを減らす効果が期待できるからです。

② 休薬トライアル

不眠症が改善し、一定期間再発がなければ、減薬および休薬を試みます。

不眠症が改善しているかどうかは、

  1. ① 夜間の不眠症状が改善している
  2. ② (睡眠の質が改善し)日中の心身の調子がよい

この2つを満たしているかどうかが一つの判断基準となります。改善していないうちに減薬や休薬した場合、不眠が再発、悪化してしまうことがあります。自己判断での減薬や休薬は決してせず、医師の指導のもとで行いましょう。

睡眠薬を中止するときは、離脱症状を避けるため、多くの場合、時間をかけて段階的に薬を減らしていきます(漸減法)2)。このとき不眠症の背景にある考え方のくせ(認知)や生活習慣(行動)を変えるための認知行動療法2)なども行うと、減薬達成や再発防止がより確実になるとされています2)

2 出口に向けた意思決定

睡眠薬の減薬・休薬は不眠症の治療の中でも、特に難しいプロセスの一つです。医師が可能と判断しても、本人の再発への不安が大きければ減薬に踏み切れません。逆に本人が減薬を望んでも、医師が現在の治療を継続すべきと判断することもあります。減薬・休薬を行う際は、本人と医師の良好なコミュニケーションに基づいた合意が欠かせません。

しっかりと話し合い、理解し、自己決定を

医療者と本人のコミュニケーションを円滑にするための方法の一つとして注目されているのが、「共同意思決定(shared decision making:SDM)」です。SDMは、今後の治療法などについて、「本人と医療者が選択可能な代替案にまつわる情報を共有して話し合い、本人の好みや価値に沿った最適な選択を行うプロセス」と定義されています3)

SDMに沿って睡眠薬の減薬・休薬を考えてみます。まず「睡眠薬の治療を継続する」「睡眠薬を減薬・中止する」といった治療方針の選択肢、それぞれの長所と短所などを医師と本人が共有します。その上で、本人の生活や価値観、希望なども考慮し、話し合いを重ねて、最終的な合意をめざすという流れになります。

減薬や休薬に際しては、医師としっかり話し合いをしましょう。その上で治療の選択肢とそれぞれのメリットとデメリットなどを十分に理解し、自己決定を行うことが、不安や後悔のない選択につながるのではないでしょうか。

睡眠薬を開始するときもSDM

話が前後しますが、睡眠薬による治療を開始する際も、医師と本人それぞれがSDMで定義されるような姿勢を持つことが大切です。

まず、(睡眠薬を)飲む/飲まないという選択肢があること、そしてそれぞれを選択した場合の長所と短所を共有します。そこに自分の希望なども加味して、話し合いを重ね、実際に薬を使うかどうか自己決定をするわけです。このようなプロセスを経ると、あとあと不安や疑問が生じることが少なくなり、安心して治療を進められます。

3 まとめ

不眠症の薬物治療では、医師が長期的な服用が必要と判断した場合を除いて、いずれ減薬や休薬を試みることになります。たとえば、不眠症が改善した段階で初めて減薬という選択肢を提示された場合、本人は少なからず動揺してしまいます。そうならないためにも、早いうちから医師と本人が減薬・休薬という出口を見据えながら、治療を進めていくことが大切です。

また、睡眠薬の導入時や減薬・休薬の際は、医師としっかりとコミュニケーションを図りながら、治療に対する理解を深め、自分自身で意思決定を行う姿勢が重要になります。

  1. 1)三島 和夫 編. 睡眠薬の適正使⽤・休薬ガイドライン, じほう, P.36-43, 2014
  2. 2)三島 和夫 編. 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.164-169, 2014
  3. 3)Politi MC, et al. J Gen Intern Med. 2013; 28(6), 838-844