1 睡眠衛生とは
生活習慣や睡眠環境など、眠りに関連する問題点を解消し、健康的な睡眠がとれるように条件を整えることを睡眠衛生といいます。一例として、「起床時に朝日を浴びる」「日中はしっかり活動する」「規則的な食生活を心がける」「音や温度、照明など寝室は心地よい環境にする」などが挙げられます1)。
2 睡眠衛生の位置づけ
「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」では、不眠症の治療においては、薬物治療よりも先に行う対応として睡眠衛生指導が位置づけられています2)。
なお、治療がうまくいき不眠症が改善した後も、再発を予防するという観点から、睡眠衛生は欠かせません。睡眠衛生の考え方に基づいた生活習慣を心がけることが、健やかな睡眠を保つことにつながります。
3 睡眠衛生を意識して睡眠不足を解消しよう
睡眠の問題を解消し、適正な睡眠時間を得るための睡眠衛生のポイントを紹介します3)。まずは自分の日ごろの生活を振り返り、睡眠に影響を及ぼす生活習慣や睡眠環境がないかを確認してみましょう。そしてできることから改善を図っていきましょう。
3-1 体内時計を整える
朝起きたらまず太陽の光を浴びてください。太陽光などの強い光には、体内時計を調節する働きがあります。毎日、同じ時刻に起き、寝床に入る習慣を身につけることも大切です。週末や休日の夜更かし、朝寝坊は体内時計を乱すことがあるので、できれば避けましょう。昼寝をする場合も、午後3時以降に長く寝すぎると夜間の睡眠に影響するため、午後3時までに、20~30分程度を目安にしてください。
3-2 生活習慣を見直す
夕方以降の激しい運動や興奮する行動、就寝1~2時間前のスマートフォンやパソコンの使用は避けてください。空腹や満腹は眠気に影響するため、1日3食、規則的な食生活を心がけることが大切です。ウォーキングなどの適度な運動、趣味を楽しむなどして、ほどよい疲労感を得たり、ストレスをためないことも心地よい眠りにつながります。
3-3 嗜好品に注意
コーヒーやコーラなどに含まれる覚醒作用と利尿作用のあるカフェイン、利尿作用があり睡眠の質も低下させるアルコール、吸入直後はリラックスできてもその後は覚醒作用が数時間持続するニコチン。夕食以降(就寝4〜5時間前を目安)にこれらを摂取するのは控えてください。就寝前は、体温を上げたり、リラックス効果もある温かい飲み物を飲むと眠りやすくなります。
3-4 心地よい就寝環境を
心地よさを感じる温度や湿度、明るさにするなど、寝室やベッド周りを気持ちよく眠れる環境に整えましょう。寝る前にゆったりとした音楽を聴いたり、読書をしたり、心身ともにリラックスしてから寝床に入るのもポイントです。枕や布団、パジャマなどの寝具にこだわってみるのもよいかもしれません。
3-5 寝ることにこだわらない
睡眠時間が少なくても、眠れなくても思い悩む必要はありません。「早く寝ないと」という思いが強すぎると、プレッシャーから逆に目が冴えてしまうこともあります。「眠くなるまで起きていよう」と開き直るくらいがちょうどいいかもしれません。
以上のような生活習慣や睡眠環境の見直しをしても睡眠の悩みが解消されない場合は、医師に相談することも検討しましょう。
4 まとめ
質の良い眠りは、規則正しい生活習慣や気持ちよく休める睡眠環境から生まれます。不眠症の治療や睡眠不足の解消のためには、睡眠衛生が何より重要なのです。睡眠の悩みがある方は、ここで紹介したポイントを参考に自身の生活習慣や睡眠環境など、眠りに関連する問題点がないか見直してみてはいかがでしょうか。
- 1)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.139, 2019
- 2)三島 和夫 編集. 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.37, 2014
- 3)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.2-10, P.139-145, 2019