睡眠薬を長く飲むと
依存性などの悪影響はある?
様々な不安を解消しよう

睡眠薬の服薬にあたっては依存性を心配される患者さんは少なくありません。
また、毎日睡眠薬を服用していると、周囲から睡眠薬の依存性を心配し休薬した方が良いと
勧められたと困った表情でご相談に来られる場合もあります。
確かに、睡眠薬の中には依存性に注意を要する薬剤もありますが、最近では依存性が少ない睡眠薬が登場し、
医師の指導に従えば、過剰に心配しなくても良くなってきています。

不眠症で困っている患者さんにとって不眠は非常に辛い症状です。
ぜひ、ご家族の方にも、患者さんの苦痛も考えて睡眠薬の依存性を過度に不安視せず、
患者さんが安心して不眠症の治療が続けられるようにお願いします。

1 2つの依存(身体依存と精神依存)

依存には身体依存と精神依存があります。服薬を中止した場合に離脱症状と呼ばれる身体の症状が生じるのが身体依存です。それに対して、薬物を常用している場合により多くの薬物が欲しくなる状態を精神依存と呼び、「ないと物足りない」「その薬物なしではいらない」という状態になることがあります1)
睡眠薬には渇望するほど強い依存性はありませんが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬では、医療的に認められている用量であっても、休薬すると不眠が再燃したり、再燃の心配から依存的になってしまう場合があります(臨床用量依存)。また、耐性によって睡眠薬の効果が減弱するために睡眠薬が増加することもあります2)

2 身体依存について

長期連用中の睡眠薬中止後の経過

大部分の睡眠薬には強い依存性はありません2)。ベンゾジアゼピン系薬剤という種類の睡眠薬では、長期の服用で身体依存(離脱症状)が生じる場合があります3)。離脱症状として多いのは反跳性不眠という症状で、休薬すると不眠の一時的な悪化が生じることがあります。特にベンゾジアゼピン系睡眠薬で、超短時間・短時間作用型の薬剤では反跳性不眠が強く生じることがあります。このため、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の休薬にあたっては、医師と相談して、少しずつゆっくり減薬し休薬するようにしてください。

3 精神依存について

睡眠薬は、前述したように渇望するほど強い精神依存を生じることはほとんどありません4)。しかしながら、睡眠薬を服用すると不眠症は改善していても、薬剤を休薬すると再び眠れなくなることを心配され、こうした心理的な依存から休薬がスムーズにいかないことも少なくありません。睡眠薬を休薬する場合には、こうした心理的な影響を考慮して、不眠症が改善してから行い、さらに不眠で支障のない時期にスタートします。大事な用事があるのであれば、それが終わり、差しさわりの無い時期から始めてください。さらに休薬にあたっては不眠の原因となる生活習慣や考え方を見直す治療(認知行動療法)は有効な治療法ですので、ぜひ、取り組んでください。

注意していただきたいのは、休薬を試みて失敗しても過度に落胆しないことです。休薬は何度でもトライすることができます。機会をみて再度チャレンジしてください。また、最近は完全に薬剤が休薬できなくても、減薬すれば薬剤の副作用を減らすことができる場合があるため、減薬もゴールと捉えるようになっています。まずは減薬で心理的なハードルを下げるのも1つの手です。

4 依存について理解し、睡眠薬の適切な服用をしましょう

睡眠薬の依存や習慣性を心配される患者さんは決して少なくありませんが、医学の進歩に伴い依存性の少ない新しい睡眠薬も登場しています。睡眠は心や身体の健康と密接に関わっています。不眠で辛い日々を過ごすよりも、まずは医師に相談して、医師の指導に従って睡眠薬を適切に服用して、不眠を改善させることを優先させてください。

  1. 1)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.118, 2019
  2. 2)三島 和夫 編集. 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.145-147, 2014
  3. 3)三島 和夫 編集. 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.146, 2014
  4. 4)三島 和夫 編集. 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン, じほう, P.53, 2014