夜勤・交代勤務による
睡眠障害と
生活リズムの
改善方法

夜勤や交代(シフト)勤務は、心身にさまざまな不調をもたらすことが知られており、
睡眠障害の原因1)になることもあります。
このような不規則な勤務が睡眠に及ぼす影響、
睡眠の質を上げるための生活改善方法について説明します。

1 夜勤・交代勤務が及ぼす心身への影響

夜勤や交代勤務に従事する労働者は増え続けています。厚生労働省が実施する労働者健康状況調査と総務省の労働力調査に基づく推計によると、深夜勤務に従事する人の割合は1997年の13.3%に対して2012年は21.4%と報告されています2)

夜勤や交代勤務によって、朝起きて夜眠るという生活リズムが崩れると、その影響はさまざまなかたちで心身に現れてきます。たとえば長期の交代勤務は冠動脈疾患や糖尿病などの発症のリスクがあると指摘されています3)

2 夜勤・交代勤務による睡眠障害

交代勤務のために睡眠時間帯が頻繁に変化することで、睡眠障害をはじめさまざまな精神・身体機能の障害がもたらされる状態のことを交代勤務睡眠障害と呼びます1)。交代勤務睡眠障害の推定有病率は2~5%と考えられています4)

①原因

人間の体内時計の周期は約25時間で、地球の自転の周期とは約1時間のずれがあります。日常生活の中で、光や食事、運動や仕事といった社会的な活動など、さまざまな刺激を受けることで、体内時計の周期は外界に同調するように修正されています5)

しかし、交代勤務による不規則な生活により、望ましい時間に寝る、活動できない状態が続くと、体内時計と地球の周期のずれを修正するのが難しくなります。このようにして生じる睡眠の障害のことを概日(がいじつ)リズム睡眠障害と呼びます。

概日リズム睡眠障害は症状によっていくつかの種類に分けられますが、交代勤務睡眠障害はそのうちの一つです5)。体内時計は正常に働いていますが、体内時計のリズムとは異なった時間帯に睡眠をとろうとすることで生じます。

②症状

典型的な症状として、夜勤を終えて朝方に寝ようとしてもなかなか寝付けず、眠りに落ちた後も何度も目が覚めてしまいます。目覚めた後に疲れが取れていないと感じることも少なくありません。ほかにも、勤務中に強い眠気が生じる、めまい、吐き気、消化器症状、作業能率や集中力の低下などがみられます。

3 勤務形態に合わせた生活改善

交代勤務は二交代制と三交代制に大別されますが、睡眠時間の確保や睡眠の質を上げるための生活改善は、それぞれ異なった対応が必要になることがあります。

二交代勤務

昼夜二交代勤務で一定期間夜勤が続いている場合は、生活のリズムを夜勤に合わせる、夜勤時の覚醒レベルを上げるための治療として、専用の機器を用いて夜間に強い光を浴びせる高照度光療法4)が行われることがあります。また、夜勤中に仮眠をとることも効果的とされ、作業効率の低下が少なくなると言われています1)

夜勤明けに朝の日光を浴びると体内時計がリセットされ、眠りづらくなります。夜勤明けにそのまま眠る場合、帰宅時はサングラスをかけるなどの工夫をしましょう4)。また、自宅ではカーテンなどで遮光を徹底するのも有効です。日中の睡眠の質の改善が期待できます1)

三交代勤務

24時間営業の小売店や飲食店、医療機関などでよくみられる三交代勤務は、勤務時間帯ごとに日勤と準夜勤、深夜勤の3つに分かれます。この3つの勤務時間を一定期間ごとにローテーションするのが一般的です。

このような三交代勤務の場合は、日勤→夕勤→夜勤の順番にシフトを組むと、生体リズムを同調させやすいことがわかっています1)。このほか、先に挙げた夜勤時の仮眠や帰宅時のサングラスの着用、カーテンでの日中の遮光なども睡眠の質改善に効果が期待できます4)

交代勤務に従事している労働者の睡眠時間確保、睡眠の質改善のためには、上記のような個人個人で行う対策や工夫も大切ですが、仕事の特性を考慮した勤務スケジュールの設定など職場全体での取り組みも重要になります。

4 まとめ

睡眠の質の低下により、疲れがとれなかったり、勤務中に強い眠気に襲われたりすると、仕事や学業に支障をきたします。場合によっては労働災害や交通事故のリスクにもなりかねません。本記事で紹介したような睡眠の悩みを抱えている人は、なるべく早く医療機関を受診し、専門家の指導のもとでさまざまな生活改善を行うことが大切です。

  1. 1)厚生労働省 e-ヘルスネット
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-017.html (最終閲覧日:2023年8月21日)
  2. 2)久保 達彦. J-UOEH, 36(4), P.273-276, 2014
  3. 3)内山 真. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.205-208, 2019
  4. 4)厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf (最終閲覧日:2023年8月21日)
  5. 5)厚生労働省 e-ヘルスネット
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-007.html (最終閲覧日:2023年8月21日)