ショートスリーパーとは?身体に良い?悪い?

ショートスリーパー(短時間睡眠者)は、睡眠時間が極端に短い人のことです。
あまり寝ていなくても健康上の問題はなく、
睡眠時間を削りがちな忙しい現代人にとって、ある意味うらやましい体質といえます。
ですが、残念ながらショートスリーパーは慣れや気合いで得られる体質ではありません。
寝不足や心身の不調を招きかねないので、無理な睡眠時間の短縮は行わないでください。

1 ショートスリーパーの定義1)

夜間の睡眠時間が毎晩平均6時間未満であるにもかかわらず、日中の眠気など健康上の異常がない人のことをショートスリーパー(短時間睡眠者)といいます。多くは小児期、若年期から睡眠時間が短く、その体質は生涯続くとされています。ショートスリーパーは、心配事が少なく、職場では有能とみなされていることが多いという報告もあります2)

海外の疫学調査によると、習慣的に睡眠時間が5時間未満の割合は、女性が4.3%、男性が3.6%と報告されています。

2 ショートスリーパーの睡眠時間

日本の成人の睡眠時間は、6時間以上8時間未満の人が約6割を占めます3)。また、睡眠時間が加齢にともなって短くなり、25歳で約7時間、65歳で約6時間とされています(海外データ)4)。ショートスリーパーの睡眠時間は5時間未満で、どの年代でも1時間以上短いにもかかわらず4)、日常生活に支障はありません。理想の睡眠時間は個人差があり、何時間寝るかよりも、眠気などの異常なく日中を過ごせるかどうかのほうが重要といえるのです。

3 ショートスリーパーは健康に悪い?

周囲と比べて極端に睡眠時間が短いショートスリーパーの人は、健康や寿命への影響など不安を感じることもあるかもしれません。ですが、結論からいうと心配する必要はありません。睡眠障害国際分類第3版においても、ショートスリーパーは不眠症の「孤発症状と正常範囲の異型」に分類されており、必ずしも病気ではないという位置づけです5)

不眠症だったり、仕事が忙しかったり何らかの原因によって短時間睡眠になっている場合は、適正な睡眠時間を確保する必要があります。海外の調査では、睡眠時間が8時間以上もしくは6時間以下の人は、死亡危険度が高かったことが報告されています6)

4 不眠を引き起こす疾患との鑑別が重要

ショートスリーパーは睡眠時間が短いだけで、日常生活に支障をきたすような症状はありません。基本的に治療は不要です。周囲の人は短すぎる睡眠時間に不安を感じ、治療を受けさせたいと考えるかもしれませんが、薬で睡眠時間を伸ばそうと試みることは合併症や副作用を引き起こすこともあります1)

一方で、ショートスリーパーだと思っていたら実は病気だったということもありえるので、不眠や睡眠時間が短くなる別の疾患との鑑別も重要になります。鑑別の際は、短時間睡眠が始まった時期や眠気をはじめ日中の異常がないかなどに着目します。

  1. 1)米国睡眠医学会(編), 日本睡眠学会診断分類委員会(訳): 睡眠障害国際分類第2版, 医学書院,p213-214 2010
  2. 2)Hartmann E, et al.: Arch Gen Psychiatry. 1972 May; 26(5): 463-468
  3. 3)Kaneita Y, et al.: J Epidemiol. 2005 Jan; 15(1): 1-8
  4. 4)Ohayon M, et al.: SLEEP. 2004; 27(7): 1255-1273
  5. 5)米国睡眠医学会(編), 日本睡眠学会診断分類委員会(訳): 睡眠障害国際分類第3版, ライフ・サイエンス, 2018
  6. 6)Kripke DF et al.: Arch Gen Psychiatry. 2002 Feb;59(2):131-136