概日リズム睡眠・覚醒障害

睡眠・覚醒のリズムが崩れる睡眠障害について紹介します。

1 概日リズム睡眠障害とは

体内時計が刻む“ほぼ1日”の周期の概日(がいじつ)リズムと、地球の自転による昼夜のリズムが合わなくなることで生じます。1日のなかで社会的に要求される、あるいは自ら望む時間帯に眠れず、不都合な時間帯に眠気がおそってくるため、日中の活動、社会生活に困難をきたします。

体内時計の同調機能1)

体内時計は、体温や血圧などの自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫・代謝系のリズムを刻むとともに、睡眠・覚醒のリズムも生み出しています。体内時計そのものが持つリズムは24時間周期より長い(平均24時間10分程度)ため、そのままでは24時間周期の昼夜のリズムと合いません。そこで体内時計は、さまざまな刺激(同調因子)を受けることで毎日のズレを修正し、生体リズムを外界の周期に同調させています。最も強い同調因子は光(朝の太陽の光)で、ほかにも食事、仕事、学校生活などが環境変化との同調に役立てられています。

2 概日リズム睡眠障害の種類2) ― タイプ別の症状、原因、対処法

タイプによって症状、原因、対処法が異なります。

2-1 睡眠・覚醒相後退障害

概日リズム睡眠障害の代表です。睡眠・覚醒相後退障害の有病率は一般人口の0.17~1.5%、ノルウェーの調査では、若年人口の3.3%と推定されています(海外データ)3)

症状
明け方にならないと眠れず、昼ごろにならないと起きられません。無理に起きても午前中は過度の眠気や集中力の低下、倦怠感などのために仕事・勉強に著しい支障をきたし、抑うつ傾向になることも多くあります。
原因
体内時計のリズムの変調により、睡眠が遅い時間帯に固定されます4)
日常生活での対処法
毎朝、太陽の光を浴びて体内時計のリズムを前倒しします。

2-2 睡眠・覚醒相前進障害

高齢者に多いとされています。加齢による朝型化は50代から始まることが報告されています2)

症状
夕方~夜早くから眠くなり、夜8時以降まで起きていることができません。夜明け前~早朝には目覚めてしまい、再び眠ることが困難です。通常は日中の学業や仕事に支障はありませんが、早い時刻から眠気が出現するため、夜間の活動が著しく制限され、対人関係や家庭生活で問題が起こることがあります。
原因
体内時計のリズムが前倒しになり、睡眠が早い時間帯に固定されます。
日常生活での対処法
夕方、太陽の光を浴びて体内時計のリズムを遅らせます。

2-3 非24時間睡眠・覚醒リズム障害

比較的まれな疾患です。視覚障害者や1日中家の中に閉じこもりがちの場合にみられることが多いとされています2)

症状
眠れる時刻・目覚められる時刻が毎日30分~1.5時間ずつ遅れていきます。昼間に睡眠時間帯がきたときに無理に起きていようとすると、強い眠気、注意力低下、疲労感、倦怠感などが出現します。逆に夜は眠れず、昼夜逆転となります。
原因
体内時計のリズムが毎日少しずつ遅れていきます。
日常生活での対処法
自分の状態に合ったタイミングで太陽の光を浴びます。

2-4 不規則睡眠・覚醒リズム障害

先天性脳障害や、認知症など神経変性疾患のため、社会的接触の少ない環境に置かれると生じやすいとされます。体の病気で病床生活を余儀なくされる場合にみられることもあります5)

症状6)
昼夜に関係なく、睡眠と覚醒がコマ切れに出現します。夜間の不眠症状と日中の眠気・昼寝の増加がみられます。総睡眠時間は保たれます。
原因6)
太陽の光や社会生活など、同調因子(体内時計のリズムを環境変化に合わせるための刺激)の働きが弱いために生じます。
日常生活での対処法6)
同調因子を強化するため、朝から昼間にかけて日光浴をしたり、声かけなど社会的接触を高めたりします。

2-5 交代勤務による睡眠障害

日勤と夜勤の交代勤務に就労する割合が、日本では全就労人口の20%前後と考えられ、そのうちの20~30%が睡眠障害を訴えていると推計されています7)

症状
夜勤後に眠れない、熟睡感がない、勤務中に強い眠気があるといった睡眠障害に加え、疲労感、めまい、吐き気、消化器症状、作業能率や集中力の低下などがみられることがあります。
原因
体内時計は正常に働いていますが、体内時計のリズムとは異なった時間帯に睡眠をとろうとすることで生じます。
日常生活での対処法8)
  • 夜勤明けに朝の日光を浴びると体内時計がリセットされ、覚醒の方向に向かうため、ますます眠れなくなります。夜勤明けにそのまま眠る場合は、帰宅時にサングラスをかけるなどの工夫が必要です。夜の睡眠を正常に保つために、夜勤後の仮眠は2~3時程度にとどめましょう。
  • ヒトの体内時計が刻むリズムは24時間よりも長い周期なので、1日が長くなる方向の勤務ローテーション──つまり日勤⇒準夜勤⇒深夜勤の順番で行うことが有効です。
  • 夜勤中の短時間の仮眠は疲労の軽減に有効であり、概日リズムの乱れを少なくする効果があります。明け方、体温が最も低くなる時間帯に短時間の仮眠をとることで、眠気や疲労が少なくなります。

3 まとめ

上記のような悩みが1カ月以上続いている場合は、医療機関に相談しましょう。概日リズム睡眠障害のタイプや、その人の状態に合わせて、薬物療法や光療法などの治療が受けられます。

  1. 1)古池 保雄 監修. 基礎からの睡眠医学, 名古屋大学出版会, P.305, 2010
  2. 2)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.205-220, 2019
  3. 3)Tomishima S, Frontiers in Psychiatry, 2022
  4. 4)Futenma K, Frontiers in Psychiatry, 2023
  5. 5)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.218-219, 2019
  6. 6)古池 保雄 監修. 基礎からの睡眠医学, 名古屋大学出版会, P.305-309, 2010
  7. 7)アメリカ睡眠医学会. 日本睡眠学会診断分類委員会訳, 睡眠障害国際分類第3版, ライフ・サイエンス, P.158, 2018
  8. 8)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.64-65, 2019