1 特発性過眠症とは
ほぼ毎日続く過度の眠気と居眠りが主な症状です1,2)。眠気の程度はナルコレプシーほど強くはなく、どうしても居眠りしてはならない状況では、居眠りを我慢できることもあります。頭痛やめまい、立ちくらみなどを伴うこともあります1)。
2 特発性過眠症の有病率
一般人口における有病率は不明ですが、ナルコレプシーよりも少ない、まれな疾患と考えられています。10代から20代で発症する事がほとんどです1~3)。
3 特発性過眠症の症状
代表的な症状を紹介します2)。
3-1 目覚めるまでに時間がかかる
いったん眠り込むと、目覚めるまでに1時間以上と長い時間がかかるのが一般的です。目覚めの際には、ナルコレプシーとは異なり爽快感を欠きます。目覚めること自体が困難で、無理に覚醒させると、混乱して周囲を見渡す症状(錯乱性覚醒)がみられます。
3-2 頭痛やめまいなどがする
頭痛、めまい、立ちくらみ、ほてり、発汗などの自律神経症状などを伴うことがあります。
3-3 夜もよく眠り、1日の睡眠時間が長い
特発性過眠症による居眠りの時間と同様に夜間の睡眠時間も長く、1日の睡眠時間が12から14時間になることもあります。
3-4 脱力症状はない
ナルコレプシーとは異なり、笑ったときなどに体の力が抜ける「情動脱力発作」はありませんが、金縛りの状態になる「睡眠麻痺」と、リアルな怖い夢をみる「入眠時幻覚」があらわれることがあります。
4 特発性過眠症が及ぼす影響
10代から20代での発症が多い1,3)ことから、授業中やテスト中などに耐え難い眠気に襲われて居眠りしてしまうケースが多いです。テスト中など絶対に寝てはいけない場面などでも、強烈な睡魔に襲われて居眠りしてしまう場合もあります。
夜しっかり睡眠しているのに、授業中は毎回居眠りしてしまうという場合は一度医療機関を受診する事をおすすめします。
目覚めた際に爽快感が無いのも特発性過眠症の特徴の一つです。たくさん寝てもスッキリせず、何度も居眠りしてしまうことがあります。
特発性過眠症は自然によくなることもありますが、症状が続いたり日中の生活への影響が大きい場合は、一度、医療機関に相談してみましょう。
5 特発性過眠症の診断
若い年齢で発症し、昼間の過剰な眠気を慢性的に訴えるケースで、閉塞性睡眠時無呼吸が否定された場合にナルコレプシーや特発性過眠症が疑われます。
ナルコレプシーにみられる情動脱力発作、睡眠時無呼吸に伴う激しいいびきはみられません。
6 特発性過眠症の対処法
生活習慣の見直しによって症状の改善がみられる場合があります。
- 十分に睡眠時間を確保して、睡眠不足による眠気を防ぎましょう。
- 飲酒、暴食、寝る前のカフェイン飲料やニコチンの摂取は避けましょう。
- 規則正しい生活習慣を送りましょう。
7 特発性過眠症の治療
中枢神経刺激薬などの薬物治療が中心になります。
- 1)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.197-198, 2019
- 2)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.85-86, 2019
- 3)松下 正明 総編集. 臨床精神医学講座 第13巻, 中山書店, P.211, 1999