グライネ・レビン症候群(反復性過眠症)

意識障害を伴って眠り続ける期間を繰り返すタイプの過眠症です。

更新日:2023/10/1

記事監修

医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック / 理事長

井上 雄一 先生

1 反復性過眠症とは

昼夜を問わず眠り続ける期間(傾眠期)と、そうでない期間(間欠期)を繰り返す過眠症です。傾眠期は年に1~10回ほど出現し、この期間が終わると症状がきれいに消失し、間欠期に入ります1)

2 反復性過眠症の疫学

極めてまれな疾患で、正確な有病率は不明です。患者の80%は10歳代に発症し、加齢とともに傾眠期の出現頻度は減少します。男性が女性よりも2~3倍多いとされています1)

3 反復性過眠症の症状1)

次のような症状がみられます。

①過眠の期間には16~20時間も眠る

通常とは違う強い眠気や倦怠感を伴う期間(傾眠期)が2~3日から3週間持続します。この間は1日に16~20時間、昼夜を問わず眠り続けます。

②過眠の期間の引き金がある

傾眠期が突然あらわれることもありますが、多くの場合、感染症、ストレス、不眠、飲酒などが引き金となります。

③過眠の期間の前兆がある

傾眠期の出現に先立ち、頭重感、倦怠感、注意・集中力の低下、胃腸障害などの前兆がみられることがあります。

④初期は強い刺激で目覚める

傾眠期の初期は眠気が強く、1日中眠り続けますが、強い刺激や尿意、便意などがあると目覚めます。食事と排泄は自発的に行うことができます。

⑤強引に起こされると反応がにぶい

強引に目覚めさせることもできますが、無気力で思考がままならず、記憶力も低下しています。

⑥現実感がない

傾眠期には現実感がなく、「夢の中にいるようだ」「周囲と幕で隔てられているようでピンとこない」といった体験もみられます。

⑦ときに行動異常を認める

頻度は低いのですが、むちゃ食い、怒りっぽい、攻撃性、性的逸脱などの行動異常が認められることもあります。

⑧過眠の期間の記憶がない

自然回復により、しだいに午後に目覚めている時期が増え、まったく症状のない間欠期に入ります。程度の差はありますが、多くの場合、傾眠期の出来事についてはほとんど覚えていません。

⑨過眠の期間の出現頻度はまちまち

その後、定まっていない間隔で傾眠期が繰り返し出現します。傾眠期の出現頻度は年に1~10回ほどとまちまちです。

4 反復性過眠症の診断1)

2~7日から数週間持続する傾眠期が反復して出現すること、傾眠期にも食事と排泄を自力で行えること、そして間欠期には完全に無症状であることが確認され、傾眠期に認知機能障害、脱抑制などがみられる場合は、反復性過眠症と診断してよいとされています。

過眠を伴ううつ病との区別が重要ですが、反復性過眠症の傾眠期はうつ病のそれに比べて著しく短期間である点が、両者を見分けるポイントになります。

5 まとめ

傾眠期の予防のためには、規則正しい生活を送り、睡眠不足、飲酒を避けることが必要となります1)。医療機関を受診して、生活指導を受けることも大切です。

  1. 1)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.198-200, 2019