1 入眠困難とは
一般に寝床に入ってから寝つくまでに30分~1時間以上かかり、本人がそれを苦痛と感じていれば「入眠困難」が疑われます。ただし、入眠にかかる時間には個人差がありますし、年齢によっても大きく異なります。ですから、入眠までの時間の長さだけでなく、その人の本来の入眠時間と比べて長くなっているかどうかも重要になります。
2 入眠困難の有病率
日本では、20歳以上の一般成人の7.2%が寝つきの悪さを体験していることが示されています(図)。入眠困難は、他の不眠症のタイプである中途覚醒や早朝覚醒に比べて、年齢による大きな頻度差は認められません1)。
3 入眠困難の原因
入眠困難の原因は人によってさまざまですが、主なものを挙げます。
3-1 睡眠環境の問題
外を走る自動車の音、テレビやエアコンの音が気になって眠りにつけない場合があります。
3-2 生活習慣の問題
寝床にスマホを持ち込んで、長い時間、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やインターネットを眺めていると、感情が刺激され、覚醒度が高くなるとともに、電子機器の画面の光によって体内時計が遅れて寝付くのが遅くなります。
3-3 身体的な問題
かゆみや痛みや鼻閉を伴う病気は入眠困難の原因になります。また、軽い心不全の患者さんが、体幹部の熱感(ほてり)のために入眠できないと訴えることもあります。
3-4 精神的な問題
- 悩みごとを考えてしまい寝つけない
- 不安や緊張が強かったり、気分の変動があったりする場合も入眠困難が起こりやすくなります。日中にあったことを思い悩んだりすると、感情的な興奮が高まり、頭が冴えた状態となり、覚醒から睡眠への移行が悪くなります。
- 眠れないのではないかと心配で眠れない
- 特に不安感がない人でも、健康に対する関心が高まると、それまであまり目が向いていなかった睡眠にこだわりを持つようになる場合があります。そのこだわりのために、よく眠れるかどうかということをくよくよ考えるようになると、寝床に入ったときの精神的緊張が高まり入眠できない状態になります。
3-5 他の睡眠障害の影響
むずむず脚症候群や、体内時計が遅れる睡眠・覚醒相後退障害*のために入眠が困難になっている場合があります。
- * 睡眠・覚醒相後退障害: 地球の自転と歩調を合わせている昼夜の体内リズムが、何らかの原因で乱れてきます。昼夜のリズムが合わなくなると睡眠時間帯がずれてきて、深夜~朝方にならないと寝付けなくなります。朝起きるのが難しく、眠気や倦怠感が強いという症状があらわれます。
4 まとめ
入眠困難の症状がある場合は不眠症の可能性が考えられます。一度、医療機関に相談することをお勧めします。
- 1)降籏隆二ら:女性心身医学;19(1):103-109, 2014