睡眠時随伴症/睡眠時随伴障害

これまで紹介した以外にも、睡眠に伴う病気や、眠りに関する困りごとがあります。

1 睡眠時随伴症とは

睡眠時随伴症とは、睡眠中や睡眠から目覚めるときに、突然泣き叫ぶ、隣に寝ている人に暴力をふるうなどの異常な行動をとったり、悪夢など本人にとって好ましくない体験をしたりする病気の総称です1)

2 睡眠時随伴症の種類

睡眠時随伴症には大きく3つのタイプがあります1)

2-1 ノンレム睡眠からの覚醒時に起こるタイプ

発症に性差はありません。小児期で発症することが多いとされています。

  • 睡眠時遊行症(夢遊病)
  • 睡眠時驚愕症(夜驚症)
  • 錯乱性覚醒(寝ぼけ)
  • 睡眠関連摂食障害 など

2-2 レム睡眠(夢らしい夢を見る眠り)の間に起こるタイプ

レム睡眠行動障害は高齢者に多く発症します。パーキンソン病やレビー小体型認知症の前触れとして現れることもあります。

  • レム睡眠行動障害
  • 悪夢障害 など

2-3 その他のタイプ

  • 睡眠時遺尿症(夜尿症)

3 睡眠時随伴症のタイプ別の症状、対処方法と治療

タイプによって異常行動や本人の体験の内容が異なります1,2)

3-1 睡眠時遊行症

眠ったまま歩き回ります。再び寝入って目覚めたときにその間の記憶はありません。

対処法
  • 子どもの場合は、基本的に思春期になると自然に症状が消失するので、家族があまり不安に思わないことが重要です。症状の頻度が低い場合には、医師のアドバイスによって家族に安心を与えるだけで、特に治療を必要としないケースも多いとされます。
  • 症状出現のきっかけになるもの(各種のストレス、鎮静薬、発熱、環境刺激、興奮、不規則な生活、痛みなど)がある場合にはできる限りそれらを取り除きます。
  • 安全策として、畳の部屋で寝る、2段ベッドなら下の段で寝るなどの工夫が必要です。
  • 症状が出ているときになだめようとすると、逆に興奮してしまうことが多いので、危険(転落、転倒、ガラスなど)に配慮した対策を立てたうえで見守ることが対応の基本となります。
治療

通常は経過観察中に自然と治まります。

3-2 睡眠時驚愕症

叫び声をあげるのが特徴です。見開いた目、恐怖にひきつる顔、多量の汗などを伴います。

対処法

睡眠時遊行症と同様の対応が必要です。

治療

通常は経過観察中に自然と治まります。

3-3 錯乱性覚醒(寝ぼけ)

覚醒途中や覚醒後に精神的に混乱している状態で、恐怖や寝床外での歩行を伴わないものです。

治療

通常は経過観察中に自然と治ります。

3-4 睡眠関連摂食障害

睡眠中に無意識のうちに何かを食べてしまいます。途中で目覚めることもありますが、まったく気づかず、翌朝に記憶がないことも少なくありません。

対処法
  • 一部の鎮静系睡眠薬によって生じることがあります。その場合は睡眠薬の変薬が必要です
  • 睡眠時遊行症などの他の睡眠障害で生じることがあります
  • 普段の好みとは異なる高カロリーの食品が選択されることが通常です1)

3-5 レム睡眠行動障害

けんかをする、追いかけられるといった夢の中での行動が、そのまま異常行動となってあらわれます。激しい寝言を言ったり、手足をばたつかせたり、ときには隣で寝ている人を叩いたりします。

対処法
  • 睡眠中の異常行動が病気によるものだということを、本人と家族が理解し、家族関係の悪化を防ぐことが必要です。
  • 寝室の障害物を片づける、寝床周りに尖ったものを置かない、寝室環境の改善を試みて、本人および寝室をともにする家族の安全を図ります。
  • ベッドから落ちたときに怪我をしないようにベッドのそばにマットを敷く、低めのベッドや布団にするなどの対策をとりましょう。
治療

抗てんかん薬を用いて治療する場合もあります。

3-6 悪夢障害

不安や嫌悪感をかきたてる悪夢を繰り返しみます。目覚めたときに悪夢の内容をよく覚えています。不安や緊張から再び眠ることがなかなかできません。

対処法
  • 悪夢障害は、しばしばPTSD(心的外傷後ストレス障害)に合併することがあります。同じ内容の悪夢を繰り返しみることで、心理的ストレス、社会的な能力や職業上の能力の障害、不安や恐怖、疲労感など、日常生活に支障が出ている場合は、睡眠専門の医療機関や精神科に相談してみてください。

3-7 睡眠時遺尿症(夜尿症)

5歳以降で、週に2度以上“おねしょ”があれば、睡眠時遺尿症と判断されます。

対処法3)
  • 基本的には発達とともに解消することが多く、その経過は良好です。
  • 親のしつけの問題や子供の心理的問題ではありません。
  • 治療を必要とする器質的疾患がある可能性もあります。
  • 寝る前の水分摂取を控える、夕食時の塩分・タンパク質・カフェインを取りすぎないなどが有効です。
  • 困ったら小児科や泌尿器科に相談しましょう。

4 まとめ

睡眠時随伴症は、有病率がそれほど高くなく、また小児期に発症した場合は自然に治まることが多いため、ともすれば軽視されがちです。しかし、慢性化すると本人の精神状態や家庭生活への影響が大きく、本人・家族のケガのリスクも高くなるので、ここで紹介した症状に思い当たったら医療機関に相談することをお勧めします。

  1. 1)アメリカ睡眠医学会. 日本睡眠学会診断分類委員会訳. 睡眠障害国際分類第3版. ライフ・サイエンス, p168-210, 2018
  2. 2)内山真:睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, p.242-249, 2019
  3. 3)夜尿症学会. 夜尿症診療ガイドライン2021.診断と治療社. 2021