不眠症/不眠障害とは

睡眠障害のなかで最も多いものの一つが不眠症です。
不眠症というと、夜、眠ろうとしても眠れない状態を思い浮かべる人が多いかもしれません。
でも、それとは別のタイプの不眠症もあります。
また、睡眠に何らかの問題があるだけでは、不眠症とは診断されません。

1 不眠症とは

なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、希望する起床時間よりもかなり早く目が覚めてしまうといった不眠の症状が続き、日中に眠気・倦怠感、意欲の低下などかみられる状態を不眠症と呼びます。不眠症状があっても、それだけでは不眠症とはいわず、日中の症状により日常生活に支障が生じてはじめて不眠症と診断されます。

2 不眠症の有病率

日本における不眠症の有病率は、一般成人で、およそ5人に1人とされています1)。若い人でも発症しますが、加齢によって増加します2)

3 不眠症の診断

何かしらの理由で夜十分に睡眠を取ることが出来ない【不眠症状】と、不眠症状の影響で日中の日常生活に支障をきたす【日中の症状】が続くことで【不眠症】と診断されます3)4)
重要なのは、不眠症状と日中症状が合わせて見られる事ではじめて不眠症と診断される点で、どちらか片方だけの症状の場合は不眠症と診断される可能性は高くありません。
ただし、不眠症状と日中症状は共に自分自身で自覚できていない可能性もあるので、少しでも不安を感じるようであれば医療機関を受診することをおすすめします。

4 不眠症の種類

不眠症には、4-1 入眠障害(入眠困難)、4-2 中途覚醒、4-3 早朝覚醒の3つのタイプがあります。
以下の3つのタイプ4,5)の不眠症のうち、一つだけ生じる場合もありますし、複数が重なってあらわれる場合もあります。

4-1 入眠障害(入眠困難)

眠りにつくのに30分~1時間以上かかり、それを苦痛と感じます。

4-2 中途覚醒

夜中に何度も目が覚めて、その後、なかなか寝つけません。

4-3 早朝覚醒

早朝など、希望する起床時間よりもかなり早く目が覚めて、もう一度眠ることができません。

5 不眠症の影響で現れる日中の症状の種類

不眠症が原因で現れる可能性がある日中症状の例です。不眠症状と合わせて継続的にこの症状が現れる場合は不眠症と診断される可能性があります。

  • 強い眠気
  • 疲労感や倦怠感
  • 記憶力の低下や能率の低下
  • ミスや事故が多い
  • 落ち込みやイライラ
  • 意欲が出ない
  • 興味や関心がわかない
  • 不眠のことを考えて仕事や勉強が手につかない

など

6 快適な日常生活のために

不眠を体験するとどうしても、「眠れる」「眠れない」ということばかりに心を奪われてしまいがちです。それでは毎日の生活が味気のないものになってしまいます。

「夜の睡眠」から「昼の活動」に目を向けることが大切です。身体的にも精神的にも日中を活動的に過ごすことで、夜の睡眠も含め、毎日の生活に良いリズムが生まれます。眠れないことに悶々として、不眠の症状で悩んでいる人は、ぜひ医師のアドバイスを受けてください。

7 不眠症の対処法と治療

不眠症の治療の第一歩は日常生活の改善から始まります。それでも不眠症が治らない場合は薬物治療を行います。

  1. 1)厚生労働省 e-ヘルスネット
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html (最終閲覧日:2023年2月7日)
  2. 2)古池 保雄 監修. 基礎からの睡眠医学, 名古屋大学出版会, P.253, 2010
  3. 3)米国睡眠医学会. 睡眠障害国際分類第3版, 医学書院, P.3, 2018
  4. 4)精神神経学雑誌オンラインジャーナル
    https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=124&year=2022&mag=0&number=3&start=192 (最終閲覧日:2023年2月7日)
  5. 5)内山 真 編集. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版, じほう, P.164-165, 2019